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- 腰痛
腰痛はもっともありふれた訴えでありながら、今までなかなか改善されていなかったものの一つです。
しかし、近年腰痛治療は急速に進歩しており、多くは症状の消失を得られるようになってきています。
腰痛の原因となる疾患は多岐にわたりますが、代表的なものは以下のものです。
- 非特異的腰痛
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 圧迫骨折
- 腰椎分離症
- 腰椎すべり症
- 骨腫瘍
- 内臓からの関連痛
- 脊柱側弯症
など。
より良い診断が症状の改善につながります。
以下それらについて詳細に説明していきます。
非特異的腰痛
あまり聞き慣れない言葉ですが、簡単に言えば、原因が分からないとされる腰痛です。脚の痺れ、痛み、足に力が入りづらいなどの症状がない場合で、原因がわからない腰痛についてこのように呼ばれます。
実際にはもっとも頻度が高いもので、近年では、原因追究よりも精神心理学的なアプローチに重点が置かれつつありますが、ほとんどは腰部にレントゲンやMRIで写らない原因があると考えており、それに対し特異的に治療することにより腰痛は軽快もしくは消失します。
ただ、精神的な状況が症状をひどくしているものも時に見られ、そのような場合は心療内科や精神科と協力し治療にあたります。
腰部椎間板ヘルニア
椎間板とは
私たちの背骨は、24個の骨が積み重なってできており、その骨と骨の間にサンドイッチされているクッションが椎間板です。
椎間板は柔らかいため、そのおかげで背骨を前に曲げたり、後ろにそらしたりできるのですが、反面、長年体の重みを支えているため、だんだん傷んできてしまいます。
椎間板ヘルニアとは
椎間板が傷んでくると、ちょっとした動作や、長時間同じ姿勢をしただけで、椎間板の中心にある髄核という柔らかい部分が回りの硬い部分を破って後ろに飛び出してしまいます。
もともと椎間板のすぐ後ろには、腰や足につながる神経があるため、飛び出した髄核は神経を圧迫し、それにより腰や足に激しい痛みやしびれが出てきます。
これが椎間板ヘルニアです。
治療
飛び出した髄核を元に戻すことは現代医学ではできませんが、5年程度でほとんどが自然吸収され、症状は軽くなるといわれています。
問題はその間の痛みをどうするかです。
ヘルニアは椎間板へ大きな体重がかかることでできるので、まずは椎間板への負担を減らすための日常生活の指導と、リハビリなどの治療でそれを軽減します。この間に鎮痛薬や湿布も併用し、痛みが強いときは硬膜外注射や神経根ブロック等のペインコントロールの手技も行います。
しかし、それでも痛みが激しく日常生活が困難なときや、神経への圧迫が強く、神経の伝わりが阻害され、一部の筋肉や内臓がうまく働かなくなってしまったときなどは手術をします。
最近は飛び出した髄核を内視鏡下でとることもできるようになり、手術による肉体的負担は飛躍的に少なくなりました。
腰部脊柱管狭窄症とは
症状
下肢や臀部の痛みやしびれが特徴です。この症状は多くの場合、腰を伸ばすと悪化し、曲げると改善します。ですから、腰掛けていて立ち上がるときや、仰向けで寝ているときに症状が出やすくなります。また、ときに長い距離を続けて歩くと下肢の痛みやしびれが出ることもあります(間欠跛行)。こういった場合は少し前屈みになったり、腰掛けたりすると軽減されます。腰痛を伴うことが多いですが、ほぼないこともあります。
原因
長年の使用で傷んだ椎間板という軟骨が飛び出したり、背骨をつなぐ靱帯が厚くなり、下肢の感覚を脳に伝える神経が腰で圧迫を受け、伝わりが悪くなるのが原因です。
診断
レントゲン写真である程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。下肢の動脈がつまって血行障害が生じたときも類似した症状が出ることがありますので注意が必要です。
予防
神経の圧迫は腰を伸ばしてたつと強くなり、前かがみになると軽減されるので、一本杖をついたり、シルバーカーを押したりして歩くと下肢の症状が出にくくなります。
治療
脊髄の血行をよくする薬や神経の修復を促進する薬などを内服します。リハビリテーションを行い、痛みが治まらないときには神経ブロックなども行います。それでも日常生活の制限が甚だしい場合には神経の通り道を広げる手術を行います。
圧迫骨折
背骨や腰の骨が、骨粗しょう症でもろくなっているため、重いものを持ったり、尻餅をついたりしただけでつぶれてしまう病気です。
60歳以上で重いものを持った後に腰痛が出て、寝返りも痛くてできないようなときは強く疑われます。
約2~3カ月のギプスやプラスチックのコルセットで治療します。
状態にあった初期治療が行われなかった場合や、骨粗しょう症の方の骨折の場合、骨折した部分がつかずに終わる偽関節という状態となり、両脚の麻痺が出る場合があります。
腰椎分離症
症状・経過
腰椎分離症は、スポーツを活発に行っている10歳代前半の伸び盛りの青少年にはじめは運動時の腰痛という形で出ます。運動の時には腰が痛いけれども、普段はなんともないといった程度で、運動を続けていくことも可能です。背中をそらす動作で腰痛が増すのが特徴で、しばしば前かがみも制限されます。
原因・病態
腰椎の後ろ半分は「椎弓」といってリング状の構造をしています。そのリングの斜め後方は細く弱い部分で、背中をそらす動作やジャンプからの着地のような動作で力がかかります。そういう動作が繰り返されると骨にひび(疲労骨折)が入ってきます。すべての人が分離症になるわけではなく、体質的な要因もあります。一番下の腰椎(第5腰椎)に好発します。
治療
分離症の起こり始めの段階では、骨の「ひび」はまだ治療できます。まず、原因となったスポーツ、運動を休止させることが第一で、加えてコルセットで腰を固定し「ひび」の部位に力がかからないようにします。ただ、骨の「ひび」が入って時間がたったものは骨が再びつくことは期待できません。痛みのコントロールが治療の目標となります。痛みに対しては痛み止めを使ったりもしますが、筋のバランスをとるために腹筋訓練や背筋、大腿部の筋のストレッチングも重要です。
また、分離症の場合、ベースに発症しやすい体質がありますので、それを変えることにより再発防止にもなりますし、骨が付かなかった場合でも腰痛は無くなることが多いようです。
スポーツ復帰
骨がつく見込みがあるかどうかはレントゲン検査やCT検査などで判断します。つく見込みがある場合は少々長いですが、6カ月くらいまでは骨をつける努力をします。その間はスポーツ活動を休止します。骨のつく見込みのなくなった分離症は強い痛みがおさまり次第、さきの治療で腰痛をコントロールしながらスポーツに復帰することになりますが、詳しくは、医師の指示に従ってください。成人の腰椎分離症の多くは無症状で、一生腰痛に悩まされるわけでもありません。
腰椎すべり症
これは分離症により腰骨の前と後が分離したことにより、骨が前に滑る分離すべり症の場合と、分離症が無いけれども前に滑る場合の変性すべり症があります。変性すべり症は、特に体の柔らかい女性に多く見られます。
腰骨の中には神経が通っているため、骨が滑ることにより神経が圧迫され、脚の痺れや痛み、足に力が入りづらいなどの症状が出ることがあります。
ただ、臀部から大腿の裏側の痛みはほとんどが神経とは無関係ですので、そのような場合すべり症になりやすい体質を改善することにより痛みは軽快することがほとんどです。